連結初心者のための実務で使える連結決算

悩める連結決算担当者のために実務で使える連結決算知識を書いてきます。

どの連結会計システムを採用すべきか

今回は数ある連結会計システムの中でどの連結会計システムを選定するかのポイントについてお話させていただきます。価格だけで判断すると失敗の原因になるため、連結会計システムの選定は慎重にご検討ください。

 連結会計システムの一覧については過去の記事に記載しています。csb47.hatenablog.jp

価格以外での主な確認ポイントについては以下の通りです。
①システム稼働環境の確認(重要度:必須)
連結会計システムによって対応しているPCの環境は異なります。
必要に応じてシステム機器の調達やソフトウェアのバージョンアップが必要となるため、必ず確認してください。
製造会社の営業担当者に問い合わせすれば必ず回答してくれます。
例)
・OS(WindowsMac)及びそのバージョン(Windows7,8,10など)
・ブラウザ(Internet ExplorerMicrosoft EdgeGoogleChromeなど)及びそのバージョン
・サーバー及びそのバージョン(Windows Server2016,2019など)
・データベース及びそのバージョン(OracleSQL ServerPostgreSQLなど)
クラウド対応の可否
・MicrosoftOfficeのバージョン(Office2016,2019など)

ちなもに過去の経験上、OSとブラウザはWindowsInternet Explorerしか対応していないケースが多かったです。

②導入実績(重要度:大)
導入実績はかなり重要です。
以下の観点で確認するとよいかと思います。
・グループ会社の規模実績
 グループ会社数が多い場合は動作が遅くて使い物にならない可能性があります。
特に中小規模の連結会計システムの場合は注意が必要です。
・グループ会社の所在地実績
 在外子会社がある企業の場合、国によってはシステムが導入できない場合があります。親会社の代行入力で対応する方法もありますが、どうしても連結会計システムでデータ収集したい在外子会社がある場合は確認しておくとよいでしょう。
・業種実績
 連結決算業務は業種ごとの差異があまりないためそこまで重要ではないですが、同業他社の導入実績がある方が無難です。

③マニュアル、手順書、導入後のサポート体制(重要度:大)
連結会計システムは操作方法が難解であるため、導入後に適切に運用ができるかは非常に重要です。導入までは完璧だったのに連結決算担当者が連結会計システムを使いこなせずに連結決算がかえって遅延したケースもよくありました。
特にサポートサイトのナレッジ、手順書がしっかり整備されているかを事前に確認しておくといいでしょう。
過去の経験だと中小規模の連結会計システムは特にここが弱いと感じています。中小規模の連結会計システムを採用した場合、導入後の特別サポートする予算を予め組み込んだ方が無難です。

④連結パッケージのフォーマット(重要度:大)
連結会計システムの中にはエクセルベースでの連結会計パッケージでデータ収集ができるものがあります。エクセルベースでのデータ収集を要望される場合は確認してみるとよいかと思います。
ただし多くの連結会計システムはマクロに対応していないなどの制約があるため、過度に期待はしない方がいいです。
またエクセルベースでのデータ収集は導入費用が高額になりがちなので予算と相談の上、どの範囲までやりたいか優先順位を決めておくとよいでしょう。

⑤個別会計システムからの連携(重要度:中)
個別会計システムからの連携を考えている場合は考慮が必要です。
こちらは個別会計システムの製造元のホームページからも確認できます。
連携の方法は主に以下の2通りがあるため、事前に連結会計システムの製造元に連携データのサンプルを送付して確認するとよいでしょう。
ODBC連携(自動連係)
CSV連携(手動連携またはバッチ処理による連携)
ただしこの段階で分かるのはあくまで「技術的に」連携可能かの回答となるため、個別会計システムのデータの持ち方によっては業務として想定した通りに連携できない場合もあります。一般的に連携はできたらラッキーくらいに思った方が無難です。

⑥帳票の種類、フォーマット(重要度:中)
連結会計システムで帳票は重要な項目の一つです。
帳票は連結決算中だけでなく保守窓口への問い合わせでも使用するので連結精算表や連結仕訳帳などの一般的な帳票だけでなく各種マスタの帳票を出力できることも確認のポイントです。
中小規模の連結会計システムの場合、標準帳票が貧弱な場合が多いですので事前に帳票のサンプルを送付してもらうとよいでしょう。
また連結会計システムの中には標準の帳票に加えてエクセルベースで独自の帳票が作成できるものがあります。ただしマクロに対応していないなどの制約が導入費用が高額になりがちなので予算と相談の上、どの範囲までやりたいか優先順位を決めておくとよいでしょう。

⑦連結担当者の操作経験(重要度:中)
重要視しているお客様は少ないですが、案外重要な項目です。
連結会計システムの導入成功の重要なポイントの一つに連結担当者の操作方法の習熟があります。過去に他社で操作経験があることは大きなアドバンテージになります。
ただし特に中小規模の連結会計システムで大手の連結会計システムの操作画面をベースにして開発されたものがよくあるので類似システムの操作経験でも十分です。

⑧自動化できる仕訳の範囲(重要度:小)
連結会計システムの中には一般的な連結修正仕訳(資本連結、内部取引消去など)に加えて独自の自動仕訳が計上できるものあります。
実際に自動化する連結修正仕訳の範囲の決定は連結会計システムの選定後になりますが、連結修正仕訳をだいたいどこまで自動化できるか予め確認しておくとよいでしょう。

連結会計システムの製造会社の方は多くの場合、自社の連結会計システムの機能しか把握していません。
連結会計システムの選定は失敗したら取り返しがつかないので他社との比較を入念に行いたい場合は第三者コンサルタントの支援を受けるのも一つの手です。