連結初心者のための実務で使える連結決算

悩める連結決算担当者のために実務で使える連結決算知識を書いてきます。

【連結決算ここが大変】簿記の連結会計と実務の連結決算との違い(その2:データ収集)

今回はグループ会社からのデータ収集業務の大変さについてお話させていただきます。
過去の記事で連結決算で一番大変なのはグループ会社からのデータ収集であることをお話させていただきました。

csb47.hatenablog.jp

簿記の連結会計ではグループ会社からのデータ収集が完了した状態から始まりますが、実務の連結決算では連結処理の前に各グループ会社から連結決算に必要なデータを収集する必要があります。

しかしながらグループ会社からのデータ収集が上手くいかず大変な思いをされている連結決算担当者は多いのではないでしょうか。
お客様からの相談内容の半分以上がグループ会社からのデータ収集をどうにかして効率化したい旨の内容です。
グループ会社からのデータ収集が上手くいかない理由は主に以下の通りです。

①連結決算を行うのに必要な情報が多い。
そもそも論になりますが、連結決算を行うのに必要な情報は非常に多いです。
連結決算に必要な情報は主に以下の通りです。
・個別財務諸表
・その他包括利益の増減明細
・グループ会社との未達取引の金額
・退職給付債務の数理計算上の差異の金額
・日本基準との差異調整が必要な項目及びその金額※在外子会社のみ
・期中に行った資本取引の内容
・グループ会社との取引金額、債権債務債務残高※セグメント別に集計
・期末棚卸資産のうちグループ会社からの仕入分の金額
・グループ会社への販売利益率
・グループ会社との固定資産取引の内容及びその金額
・グループ会社に対する債権の貸倒引当金繰入率
法定実効税率
・固定資産資産・負債の増減明細
・セグメント別BS、PL
今回はあえて注記情報作成に必要な情報は記載していませんが、それを含めるとさらに倍以上になります。これだけ見ても連結決算を行うのに必要な情報が膨大であることが分かるのではないでしょうか。
後のスケジュールを考えるとこれらの情報は遅くとも決算日から2週間以内に収集する必要があります。なお、これらの情報を効率的に収集するために連結パッケージという必要な情報を収集するためフォーマット(主にエクセル)を作成している企業は多いです。連結パッケージについてはいずれお話させていただきます。

②グループ会社から収集した情報に漏れや誤りが多い。
グループ会社に連結決算に必要な情報を期限内に親会社に送付させるのは非常に難しいです。またグループ会社から収集した情報に誤りがあるため、そのまま連結決算に使用できないことも多いです。
これらの原因は主にグループ会社の決算担当者のスキル面にあります。
グループ会社の決算担当者は連結会計どころか単体会計も理解せずに決算を行っている場合が少なくありません。たとえ大企業であっても従業員が数人レベルのグループ会社があるケースもあります。このようなグループ会社でまともな決算ができる可能性は残念ながら低いです。
このような現状から親会社の決算担当者が個別財務諸表の作成から連結決算に必要な情報の作成までを行っているケースもあります。グループ会社が少ないうちは何とかなりますが、グループ会社が増えた時に親会社の決算担当者の負担が非常に高くなります。

③グループ会社から収集した情報の整理が大変。
使用しているシステムが異なっているなどの理由で同じ情報でもグループ会社によってフォーマットが異なっているケースも少なくありません。また会計処理の漏れ、誤りなどの理由で情報に修正が入るのは日常茶飯事なのでグループ会社から収集した情報の最新版を適切に管理する必要があります。
このような状況で収集した情報に漏れや誤りがないか適切に確認、整理することは非常に煩雑です。

④グループ会社とのコミュニケーションが大変。
グループ会社から収集した情報間の整合性が取れていなかったり、漏れや誤りがあった場合はグループ会社の決算担当者に確認する必要があります。
しかしグループ会社の決算担当者のスキル面の問題により適切な回答が得られなかったり、特に在外子会社の場合は時差、文化などの理由で回答に時間を要するケースは少なくありません。

このように多くの企業ではグループ会社からのデータ収集に苦労しています。

次回は単純合算についてお話させていただきます。
(次回の記事はこちら