連結初心者のための実務で使える連結決算

悩める連結決算担当者のために実務で使える連結決算知識を書いてきます。

【連結会計システム導入のポイント】連結会計システムかエクセルか(その2:データ収集)

今回はデータ収集業務についてお話させていただきます。

まず企業が連結決算を行うために各グループ会社から主に以下の方法でデータ収集を行っています。
①他システムから連結会計システムに連携
連結会計システムのエクセルベース画面に手入力
連結会計システムのユーザー定義画面に手入力
連結会計システムの標準画面に手入力
⑤連結パッケージ(エクセル)をグループ会社で入力、親会社にメールで送付
⑥単体決算等で使用した資料を親会社にメールで送付

上記のうち①~④が連結会計システムを利用したデータ収集です。
連結会計システムを導入している企業でも収集するデータによって①~⑤の方法を使い分けています。それぞれの方法のメリット・デメリットは以下の通りです。

①他システムから連結会計システムに連携
【メリット】
・親会社、グループ会社担当者の双方の負担が一番少ない。
経理ミスのリスクが少ない。
【デメリット】
・追加のライセンス費用がかかる場合がある。
・連携を構築するコストが高い。
・連携元となる他システムのデータの内容、粒度によって連携できるデータに制限がある。
・勘定科目、グループ会社が追加される度に連携設定のメンテナンスをしなければならない。
・システムの不具合が少なくない。

最も理想的な方法ではありますが、かなりハードルが高いです。
過去の経験上、連携できるのは個別財務諸表及びセグメント別財務諸表くらいでグループ会社との取引高、債権債務の金額(内部取引消去)、増減明細(連結キャッシュ・フロー計算書作成)、注記情報を連携できる企業はほとんどありません。

連結会計システムのエクセルベース画面に手入力
【メリット】
・エクセルベースの画面のため、比較的入力がしやすい。
・エクセルベースの画面のため、エクセルで作成した資料を張り付けることができる。
・エクセル関数の計算結果を連結会計システムに登録できる。
連結会計システムのデータを参照させることができる。
・常に最新データを確認できる。
・集計が容易である。
・簡単なチェック機能(貸借金額の一致確認など)を利用できる。
・各グループ会社のデータ収集状況の進捗管理ができる。
【デメリット】
・追加のライセンス費用がかかる場合がある。
・導入コストが高い。
・勘定科目、グループ会社が追加される度に画面のメンテナンスをしなければならない場合がある。
・自社での画面の大幅なメンテナンスが難しく、追加の費用がかかる。
・システム不具合が少なくない。

エクセルに近い形でデータ入力ができるため要望されるお客様が多いのですが、導入・メンテナンスのコストが比較的高いため、導入範囲は限定することを推奨します。

連結会計システムのユーザー定義画面に手入力
【メリット】
・集計が容易である。
・各グループ会社のデータ収集状況の進捗管理ができる。
・常に最新データを確認できる。
・チェック機能の構築ができる場合がある。
・入力項目を増やしたい場合のメンテナンスが比較的容易である。
・①、②と比較して導入コストが低い。
・システムの不具合が少ない。
【デメリット】
・追加のライセンス費用がかかる場合がある。
・データの入力方法をグループ会社の決算担当者に教育する負担がある。

主に注記情報を収集したい場合に使用され、②の方法と組み合わせる場合もあります。連結会計システムによってこの機能がない場合があるため、利用したい場合は製造元のベンダーに確認してみるとよいかと思います。

連結会計システムの標準画面に手入力
【メリット】
・集計が容易である。
・簡単なチェック機能(貸借金額の一致確認など)を利用できる。
・各グループ会社のデータ収集状況の進捗管理ができる。
・常に最新データを確認できる。
・勘定科目、グループ会社が増えた場合のメンテナンスが比較的容易である。
・①~③と比較して導入コストが低い。
・システムの不具合が少ない。
【デメリット】
・データの入力フォーマットに制約がある。
・データの入力方法をグループ会社の決算担当者に教育する負担がある。
・多くの連結会計システムでは注記情報を入力する標準画面がない。

連結会計システムを導入した場合で最も低コストな方法ではありますが、収集できるデータの制約や教育の負担から連結決算担当者は使いにくいと感じがちです。

⑤連結パッケージ(エクセル)をグループ会社で入力、親会社にメールで送付
【メリット】
・稼働環境の制約がほぼない。
・比較的入力がしやすい。
・入力項目を増やしたい場合のメンテナンスが比較的容易である。
・勘定科目、グループ会社が増えた場合のメンテナンスが比較的容易である。
・グループ会社のデータがまとまっているため管理しやすい。
・導入コストが少ない。
【デメリット】
・集計が煩雑である。
・グループ会社の決算担当者が意図しないエクセルの改変を行う場合がある。
・各グループ会社のデータ収集状況の進捗管理ができない。
・最新データの管理が煩雑である。

グループ会社が10~20社程度のエクセルで連結決算を行っている企業はこの方法を採用していることが多いです。

⑥単体決算等で使用した資料を親会社にメールで送付
【メリット】
・稼働環境の制約がほぼない。
・グループ会社の決算担当者の負担がほとんどない。
・導入コストがない。
【デメリット】
・集計が煩雑である。
・資料の管理が煩雑である。
・各グループ会社のデータ収集状況の進捗管理ができない。
・最新データの管理が煩雑である。

グループ会社が10社以下のエクセルで連結決算を行っている企業はこの方法を採用していることが多いです。この方法で収集したデータを親会社の連結決算担当者が連結会計システムに入力する場合もあります。
グループ会社が増えていくと親会社の連結決算担当者の負担が非常に大きくなるので効率化のためには①~⑤の方法を採用することを推奨します。

導入コストの大きさは①、②>>③>④>⑤、⑥、親会社の連結決算担当者の負担の大きさは⑥>⑤>④>③>②>①の順番です。
連結会計システム導入の最大のメリットはデータ収集業務を効率化できることにあります。データ収集業務に苦労している企業は連結会計システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

次回は換算・単純合算以降の処理についてお話させていただきます。
(次回の記事はこちら