連結初心者のための実務で使える連結決算

悩める連結決算担当者のために実務で使える連結決算知識を書いてきます。

【連結会計システム導入のポイント】連結会計システムかエクセルか(その4:内部取引消去、貸倒引当金調整、棚卸資産未実現)

今回は前回に引続き連結修正仕訳作成(⑥内部取引消去、⑦貸倒引当金調整、⑧棚卸資産未実現消去)についてお話させていただきます。

連結会計システムで自動化できる処理は主に以下の通りです。
ただし部分的に自動化できない取引がありますのでご留意ください。
①換算
②単純合算
③開始仕訳作成
④連結除外仕訳作成
⑤資本連結仕訳作成
⑥内部取引消去仕訳作成
⑦貸倒引当金調整仕訳作成
棚卸資産未実現消去仕訳作成
⑨固定資産未実現消去仕訳作成
⑩連結税効果仕訳作成
⑪純額処理仕訳作成

各項目単位で連結会計システムで自動化できることは以下の通りです。
今回は⑥内部取引消去仕訳作成~⑧棚卸資産未実現消去仕訳作成についてお話させていただきます。
⑤資本連結仕訳作成までについてはこちらの記事をご参照ください。
csb47.hatenablog.jp

⑥内部取引消去仕訳作成
連結会計システムでの内部取引消去仕訳作成手順は以下の通りです。
ⅰ.グループ会社向け取引金額・債権債務金額の入力
ⅱ.内部取引突合
ⅲ.内部取引消去仕訳作成

具体的な手順は以下の通りです。
ⅰ.グループ会社向け取引金額・債権債務金額の入力
個別財務諸表の金額とは別にグループ会社向けの金額を入力します。
ただしセグメント情報作成のため以下のように自社、相手会社はセグメント単位で金額を入力する必要があります。

  勘定科目 自社 自社セグメント 相手会社 相手セグメント 金額
a 売掛金 P社 Aセグメント S社 Aセグメント 500
b 売上高 P社 Aセグメント S社 Aセグメント 100
c 売上高 P社 Bセグメント S社 Cセグメント 200
a 買掛金 S社 Aセグメント P社 Aセグメント 500
b 売上原価 S社 Aセグメント P社 Aセグメント 90
c 売上原価 S社 Cセグメント P社 Bセグメント 220

ⅱ.内部取引突合
ⅰで入力した金額を会社・セグメント単位で以下のように突合します。
≪パターンa≫
 債権【P社(Aセグメント)】:500
 債務【S社(Aセグメント)】:500
 差異:0
 セグメント:セグメント内取引(Aセグメント)
≪パターンb≫
 収益【P社(Aセグメント)】:100
 費用【S社(Aセグメント)】:90
 差異:10
 セグメント:セグメント内取引(Aセグメント)
≪パターンc≫
 収益【P社(Bセグメント)】:200
 費用【S社(Cセグメント)】:220
 差異:-20
 セグメント:セグメント間取引
ⅲ.内部取引消去仕訳作成
内部取引消去仕訳を作成します。ⅱで差異が発生している場合は以下のように自動的に調整します。
≪パターンa:セグメント内取引(Aセグ)≫
 買掛金 500/売掛金 500
≪パターンb:セグメント内取引(Aセグ)≫
 売上高 100/売上原価 90
         売上原価 10※差額調整
≪パターンc:セグメント間取引≫
 売上高  200/売上原価 220
 売上原価  20※差額調整

⑦貸倒引当金調整仕訳作成
⑥内部取引消去仕訳及び事前に入力した貸倒引当金繰入率から貸倒引当金調整仕訳作成を作成します。自動化するに当たり主な検討事項は以下の通りです。
ⅰ.債権科目グループ及び自動仕訳で使用する勘定科目
以下の例のように債権科目グループ単位で貸倒引当金調整の対象科目や自動仕訳で使用する勘定科目を定義します。
ただし連結会計システムによっては債権科目グループや自動仕訳で使用できる勘定科目に制約があるため、予め債権科目グループ及び自動仕訳で使用したい勘定科目整理する必要があります。
例)

債権科目
グループ
貸倒引当金調整対象
勘定科目
自動仕訳で使用する勘定科目
営業債権 売掛金 貸倒引当金繰入(販管費
受取手形 貸倒引当金(流動)
短期営業外債権 短期貸付金 貸倒引当金繰入(営業外)
貸倒引当金(流動)
長期営業外債権 長期貸付金 貸倒引当金繰入(営業外)
貸倒引当金(固定)

ⅱ.貸倒引当金繰入率の入力区分
貸倒引当金繰入率を入力できる区分は主に以下の通りです。
ただし連結会計システムによっては入力できる区分に制約があるため、予めどのような区分で貸倒繰引当金入率を入力したいか整理する必要があります。
≪貸倒引当金繰入率の入力区分例≫
・債権科目グループ
・自社
・相手会社
例)

債権科目
グループ
自社 相手会社 貸倒引当金
繰入率
営業債権 P社 S1社 1%
営業債権 P社 S2社 2%
短期営業外債権 P社 全社共通 3%
短期営業外債権 S1社 全社共通 4%
長期営業外債権 P社 全社共通 5%

棚卸資産未実現消去仕訳作成
期末の棚卸資産金額及び利益率から棚卸資産未実現消去仕訳を作成します。
自動化に当たり主な検討事項は以下の通りです。
ただしよほど未実現消去仕訳を行う棚卸資産の種類が多くなければあえて自動化せず手入力仕訳で対応しても十分かと思います。
ⅰ.棚卸資産グループ及び自動仕訳で使用する勘定科目
以下の例のように棚卸資産グループ単位で自動仕訳で使用する勘定科目を定義します。
ただし連結会計システムによっては棚卸資産グループや自動仕訳で使用できる勘定科目に制約があるため、予め棚卸資産グループ及び自動仕訳で使用したい勘定科目整理する必要があります。
例)

棚卸資産
グループ

自動仕訳で使用する
勘定科目

A製品 製品
製造原価
B製品 製品
製造原価
仕掛品 仕掛品
製造原価
商品 商品
商品売上原価

ⅱ.期末の棚卸資産金額及び利益率の入力区分
期末の棚卸資産金額及び利益率を入力できる区分は以下の通りです。
ただし連結会計システムによっては入力できる区分に制約があるため、予めどのような区分で棚卸資産未実現データを入力したいか整理する必要があります。
棚卸資産未実現消去の入力区分例≫
棚卸資産グループ
・自社
・自社セグメント
・相手会社
・相手セグメント
例)

棚卸資産
グループ
自社 自社
セグメント
相手会社 相手
セグメント
期末棚卸
資産金額
利益率
A製品 P社 共通 S1社 共通 100 10%
P社 共通 S2社 共通 200 15%
B製品 P社 Aセグメント 全社共通 共通 300 20%
P社 Bセグメント 全社共通 共通 400 25%
仕掛品 P社 共通 全社共通 共通 500 30%
S1社 共通 全社共通 共通 600 35%
商品 P社 共通 全社共通 Aセグメント 700 40%
P社 共通 全社共通 Bセグメント 800 50%

ⅲ.その他の検討事項
棚卸資産未実現消去についてその他の検討事項は主に以下の通りです。
こちらも連結会計システムによっては実現できない場合もあります。
・多段階の未実現取引の有無(例:P社→S1社→S2社)
・未実現損失の有無

次回は⑨固定資産未実現消去仕訳作成以降についてお話させていただきます。
(次回の記事はこちら