連結初心者のための実務で使える連結決算

悩める連結決算担当者のために実務で使える連結決算知識を書いてきます。

【連結決算ここが大変】簿記の連結会計と実務の連結決算との違い(その7:固定資産未実現消去)

今回は固定資産未実現消去について簿記と実務との違いをお話させていただきます。

過去の記事で実務で大変だと感じている項目の順番は以下の通りとお話させていただきました。
 1.内部取引消去
 2.在外子会社の換算、単純合算
 3.個別修正(資産負債の評価差額、退職給付調整など)
 ---------------------------------------------------------------(超えられない壁)
 4.棚卸未実現消去
 ---------------------------------------------------------------(超えられない壁)
 5.資本連結
 6.固定資産未実現消去
 7.貸倒引当金の調整

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固定資産未実現消去が実務で大変となるポイントは以下の通りです。

①固定資産異動情報の収集が大変である。
固定資産未実現消去の連結修正仕訳作成のためには各グループ会社から以下のような固定資産異動情報を収集する必要があります。
・グループ会社からの固定資産購入・売却情報
・グループ会社から購入した固定資産の外部会社への売却・除却情報
・グループ会社から購入した固定資産の減損情報
・グループ会社から購入した固定資産の減価償却方法・償却年数の変更情報

しかし主に以下の理由で固定資産異動情報の収集するのは大変です。
・そもそもグループ会社が自社の固定資産情報を整理できていない。
・固定資産情報のうちグループ会社に関するものを抽出するのが煩雑である。

過去に経験した事例では例えば以下のような課題がありました。
・固定資産システム、単体会計システムでは直接法で金額を保持しているため、取得価額、減価償却減損損失)累計額を把握できない。
・固定資産システムに固定資産の売却先が記載されていないため、請求書や仕訳帳から売却先を把握しなければならない。
・固定資産システムでは税務上の金額しか保持していないため、固定資産の減損があるなどの理由で会計上の金額と異なってしまった場合に固定資産の会計上の金額を収集するのが大変である。

このような状況であるため、親会社の連結決算担当者が各グループ会社から全ての固定資産情報を収集しその中から固定資産未実現消去に必要な情報の抽出を行っているケースは多かったです。そのため特に多くの固定資産を保有している企業は固定資産情報の収集に多大な時間がかかっているケースが多かったです。

連結会計システムで自動化できない取引がある。
ほとんどの連結会計システムでは下記の取引は固定資産未実現消去の連結修正仕訳を自動化は難しいため、連結決算担当者は連結修正仕訳を手作成する必要があり煩雑です。
・グループ会社から購入した固定資産の減損
・グループ会社から購入した固定資産の減価償却方法・償却年数の変更
・グループ会社から購入した固定資産の一部売却・除却

上記が固定資産未実現消去の実務で主に大変となる項目です。
固定資産未実現は製造業・不動産業など多数の固定資産を保有している企業は苦労している傾向にあります。固定資産管理システムも種類はありますが、連結決算のことまで考えて構築・運用するのは非常に難易度が高いです。
さらに言えば連結決算において固定資産情報は固定資産未実現消去仕訳だけでなく連結キャッシュ・フロー計算書や注記などにも使用されます。そのため子会社の固定資産情報を効率的に収集する仕組みを構築することで連結決算の効率化につながります。