連結初心者のための実務で使える連結決算

悩める連結決算担当者のために実務で使える連結決算知識を書いてきます。

【連結決算ここが大変】簿記の連結会計と実務の連結決算との違い(その4:個別修正)

今回は個別修正について簿記と実務との違いをお話させていただきます。

個別修正とは単体会計と連結会計で適用される会計基準などの違いなどの理由により各グループ会社の個別財務諸表の金額を修正することです。

主な例として以下のものがあります。
・単体決算の修正
・新規連結時の資産負債の時価評価
・未達取引
・期ずれ修正
・実務対応報告第18号 「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」による修正(在外子会社修正)
・退職給付債務の未認識数理計算上の差異調整
・子会社株式の取得関連費用調整
・子会社株式評価損の振戻し
・親会社株式の時価評価振戻し など

過去の記事で実務で大変だと感じている項目の順番は以下の通りとお話させていただきました。
 1.内部取引消去
 2.在外子会社の換算、単純合算
 3.個別修正(資産負債の評価差額、退職給付調整など)
 ---------------------------------------------------------------(超えられない壁)
 4.棚卸未実現消去
 ---------------------------------------------------------------(超えられない壁)
 5.資本連結
 6.固定資産未実現消去
 7.貸倒引当金の調整

※関連記事
csb47.hatenablog.jp

上記の通り個別修正が実務で大変だと感じている項目の順番の上位とした理由は以下の通りです。

①単体決算の修正が大変である。
単体決算の修正とは各グループ会社から個別財務諸表の金額の報告があった後に連結決算上で行う修正のことです。本来単体決算で対応する項目ですが、以下の理由などにより連結決算上で修正する企業があります。
・グループ会社の決算担当者に修正を依頼するのが手間である。
・税務申告の内容を修正したくない。
・個別会計システムの本締め処理を行ってしまった。
管理会計上の業績管理のやり方を変えたくない。
(例:商品評価損は本来売上原価であるが、営業利益に影響が出てしまうので特別損失として計上する。)
・個別財務諸表の勘定科目の粒度が粗い。
(例:有形固定資産の表示が直接法になっているので間接法に修正する。)

要するに単体決算ができていないことのしわ寄せが連結決算にきている状態です。
連結決算に苦労していると思っているお客様の話をよくよく聞いているとそもそも単体決算に問題あることが原因であるケースは結構多いです。

②未達取引、期ずれ修正が大変である。
これも結構多いです。販売側の会社の売上計上のタイミングと購入側の仕入計上のタイミングの合わせるのは双方の会社の会計処理の内容を把握する必要があるため、非常に煩雑となります。中にはそもそもグループ会社との取引金額を把握できていないケースもよくあります。
未達取引、期ずれ修正はきちんと対応しないと内部取引消去処理で苦労することになります。

③在外子会社修正が大変である。
在外子会社修正とは現地の会計基準と日本基準との差異を修正することです。IFRSまたは米国基準であれば修正項目は一部で済みますが、それ以外の会計基準で個別財務諸表が作成されている場合は修正内容を把握するのがかなり煩雑になります。
在外子会社の場合、現地の経理能力の低さからこの修正に加えて①単体決算の修正が複合しているケースも多く、さらに大変なことになっている企業は多いです。

内容を総括すると個別修正の大変な原因のほとんどが単体決算の精度の低さにあります。個別修正に苦労している企業はまず単体決算業務の見直しを検討してみてはいかがでしょうか。

次回は内部取引消去についてお話させていただきます。
(次回の記事はこちら