連結初心者のための実務で使える連結決算

悩める連結決算担当者のために実務で使える連結決算知識を書いてきます。

【連結会計システム導入のポイント】連結会計システムかエクセルか(その3:換算・単純合算、開始仕訳、連結除外、資本連結)

今回は換算・単純合算、連結修正仕訳作成(③開始仕訳、④連結除外、⑤資本連結)についてお話させていただきます。

まず連結会計システムで自動化できる処理は主に以下の通りです。
ただし部分的に自動化できない取引がありますのでご留意ください。
①換算
②単純合算
③開始仕訳作成
④連結除外仕訳作成
⑤資本連結仕訳作成
⑥内部取引消去仕訳作成
⑦貸倒引当金調整仕訳作成
棚卸資産未実現消去仕訳作成
⑨固定資産未実現消去仕訳作成
⑩連結税効果仕訳作成
⑪純額処理仕訳作成

各項目単位で連結会計システムで自動化できることは以下の通りです。
今回は⑤資本連結仕訳作成までお話させていただきます。

①換算・単純合算
・決算日レート(CR)及び期中平均レート(AR)での換算
・取引日レート(HR)で換算する勘定科目の前期末換算後金額の繰越
・為替換算調整勘定の計算
なお、資本取引などの取引日レート(HR)で換算する項目は換算後の金額を手入力する必要があります。

②単純合算
一部の連結会計システムでは実現方法は異なりますが、以下のようにデータ収集の期間と連結処理の期間を別々に設定することができます。
例1)期間の合算
データ収集は四半期単位、連結処理は累計で行うことができます。

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例2)期間の差引
データ収集は累計、連結処理は四半期単位で行うことができます。

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③開始仕訳作成
前期の連結修正仕訳から仕訳の区分によって以下のパターンで開始仕訳を自動作成します。
ⅰ.パターン1(開始仕訳のみ)※資本連結など
仕訳例)
≪前期の連結修正仕訳≫
 非支配株主に帰属する当期純利益 100/非支配株主持分 100
≪当期の開始仕訳≫
 利益剰余金【期首残高】100/非支配株主持分 100
ⅱ.パターン2(開始仕訳+実現仕訳)※棚卸資産未実現消去など
仕訳例)
≪前期の連結修正仕訳≫
 売上原価 100/棚卸資産 100
≪当期の開始仕訳≫
 利益剰余金【期首残高】100/棚卸資産 100
 棚卸資産 100/売上原価 100
ⅲ.パターン3(開始仕訳なし)※内部取引消去など
仕訳例)
≪前期の連結修正仕訳≫
 売上高 100/売上原価 100
≪当期の開始仕訳≫
 仕訳なし

注意点として前期に手入力仕訳をどの仕訳の区分で入力するかによって当期の開始仕訳の自動作成内容が異なるため、誤った仕訳の区分で手入力仕訳を入力してしまうと想定通りの開始仕訳が作成されません。

④連結除外仕訳作成
当期に連結除外があった場合に開始仕訳及び当期の連結修正仕訳の振戻仕訳及び子会社株式売却損益の調整仕訳(一部の連結会計システムのみ)を自動作成します。
仕訳例)※資本連結の場合
≪当期の開始仕訳≫
 資本金【期首残高】  200/子会社株式    250
 利益剰余金【期首残高】100 非支配株主持分 50
≪当期の連結修正仕訳≫
 非支配株主に帰属する当期純利益 100/非支配株主持分 100
≪連結除外仕訳≫
 子会社株式      250/資本金【連結除外】  200※開始仕訳の振戻し
 非支配株主持分    50 利益剰余金【連結除外】100
 非支配株主持分    100/利益剰余金【連結除外】100※当期連結仕訳の振戻し
 子会社株式売却損益 XX/利益剰余金【連結除外】 XX
 ※子会社株式売却損益の調整

なお、子会社株式売却損益の調整仕訳は一部の連結会計システムでは自動作成されません。
⑤資本連結仕訳作成
資本連結はどの連結会計システムでも一部の取引しか自動化できません。
目安となりますが自動化の可否は以下の通りです。単純な取引は自動化できますが、複雑な取引は自動化できない傾向があります。
≪ほぼ全ての連結会計システムで自動化できる取引例≫
・新規子会社の取得
・のれんの償却
当期純損益の非支配株主持分への按分
・その他包括利益の非支配株主持分への按分
・利益剰余金からの配当金調整
・増資、減資
・持分の追加取得
≪一部の連結会計システムでは自動化できない取引例≫
・資産・負債の評価差額の計上、実現、税率変更
・持分の一部売却(連結範囲の変更なし)
≪自動化できない取引例≫
・全部のれん方式による新規子会社取得時ののれん計算
・資本剰余金からの配当金調整
・子会社同士の合併
・親子合併
・段階取得
・グループ会社間の子会社株式の売買

⑥内部取引消去仕訳作成以降で連結会計システムでできる内容につきましては次回の記事にてお話させていただきます。
(次回の記事はこちら