連結初心者のための実務で使える連結決算

悩める連結決算担当者のために実務で使える連結決算知識を書いてきます。

連結キャッシュ・フロー計算書作成の実務(その1:在外子会社の換算)

今回は連結キャッシュ・フロー計算書(以下、連結CF計算書)作成のうち在外子会社の換算についてお話させていただきます。
連結範囲に在外子会社が含まれる場合、格段に難易度が上がります。
以下の数値例を見てみましょう。

例)
当期に在外子会社(通貨:ドル)は300ドルの売上があり、100を現金で受け取り残りは掛けとした。
前期末の決算日レート(CR)は@100、当期の期中平均レート(AR)@150、当期末の決算日レート(CR)は@200である。
①仕訳(ドル)
現金  100/売上 300
売掛金 200
②BS、PL(ドル)
・BS(抜粋)

  期首残高 期末残高 増減額
現金 300 400 100
売掛金 500 700 200
利益剰余金 0 300 300
為替換算調整勘定 0 0 0

・PL
売上    300
当期純利益 300
③BS、PL(換算後)
・BS(抜粋)

  期首残高 期末残高 増減額
現金 30,000 80,000 50,000
売掛金 50,000 140,000 90,000
利益剰余金 0 45,000 45,000
為替換算調整勘定 0 95,000 95,000

・PL
売上    45,000
当期純利益 45,000
④連結CF計算書(円)
※親会社その他の連結子会社の取引は無いものとする

 税金等調整前当期純利益 45,000
 売上債権の増減額(※) -30,000
小計 15,000
営業活動によるキャッシュ・フロー 15,000
投資活動によるキャッシュ・フロー 0
財務活動によるキャッシュ・フロー 0
現金及び現金同等物の換算差額 35,000
現金及び現金同等物の増減額 50,000
現金及び現金同等物の期首残高 30,000
現金及び現金同等物の期末残高 80,000

※-200(外貨建ての売掛金の増減額)×@150(AR)

ポイントとなるのはBS(換算後)の売掛金の増減額(90,000)と連結CFの売上債権の増減額(-30,000)に差異があることです。特に簡便法で連結CF計算書を作成するときにBS(換算後)の売掛金の増減額からの調整が必要となり実務上の負担が大きくなることです。そのため在外子会社がある場合は原則法での連結CF計算書の作成を推奨します。