勘定科目を細分化すると効率的にキャッシュ・フロー計算書が作成できます(その1:概要)
今回はキャッシュ・フロー計算書(以下CF)を効率的に作成するための勘定科目体系についてお話させていただきます。
まずはCFは主に以下の情報から作成されます。
営業CF・・・・・・BSの増減(純額)、PL
※一部BSの増減(総額)
投資、財務CF・・・BSの増減(総額)、PL
CFの作成にはBSの増減金額を理由ごとに集計する必要があることは多くの方は認識されているかと思いますが、実務ではさらに以下の例のようにBS、PL科目を細分化する必要が出てくるケースがあります。
例1)未払金
Ⅰ.仕訳
・広告宣伝費が500発生した(期末時点で未払)
広告宣伝費 500/未払金 500
・土地を300で購入した(期末時点で未払)
土地 300/未払金 300
Ⅱ.BS(抜粋)
期首残高 | 期末残高 | 増減額 | |
---|---|---|---|
未払金 | 0 | 800 | 800 |
Ⅲ.CF(抜粋)
税金等調整前当期純利益 | -500 |
未払金の増減額 | 500 |
小計 | 0 |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 0 |
有形固定資産の取得による支出 | 0 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | 0 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | 0 |
現金及び現金同等物の増減額 | 0 |
・・・ |
ここでポイントとなるのはBSの「未払金」の増減額(800)とCFの「未払金の増減額」(500)に差異があることです。
この理由は営業活動によるキャッシュ・フロー は営業債権債務の増減のみをを反映し、投資・財務活動で発生した債権債務は反映させないためです。
当該差異を調整するための対応方法は主に以下の通りです。
①BSの「未払金」の増減額(800)をCF作成の段階で営業分(500)とそれ以外(300)に細分化した後にCFの調整を行う。
②事前にBSの「未払金」をCF用に細分化しておく。
多くの企業では①の方法を採用していますが、単体決算の資料に遡る必要がある場合があるためこの作業が煩雑に感じている連結決算担当者は多いのではないでしょうか。
個人的にはこの作業を無くすために②の方法を推奨しています。
先ほどと同じ例で②の方法を採用した場合は以下の例のようになります。
例2)未払金※CF用に細分化した場合
Ⅰ.仕訳
・広告宣伝費が500発生した(期末時点で未払)
広告宣伝費 500/未払金(営業) 500
・土地を300で購入した(期末時点で未払)
土地 300/未払金(有形固定資産) 300
Ⅱ.BS(抜粋)
期首残高 | 期末残高 | 増減額 | |
---|---|---|---|
未払金(営業) | 0 | 500 | 500 |
未払金(有形固定資産) | 0 | 300 | 300 |
Ⅲ.CF(抜粋)
例1と同じ
このように未払金を細分化すればBSの「未払金(営業)」の増減額(500)とCFの「未払金の増減額」(500)を一致させることができ、CFの調整が不要となります。
次回以降の記事で具体的な勘定科目の細分化の事例についてお話させていただきます。
(次回の記事はこちら )